ポイント
- 人や政権じゃなくて、政策を選ぶんです。
- 発議されたら最短60日、最長180日で国民投票って短いですよね。
- 発議前の憲法審査会等での議論の段階から考えておくことが大事です。
- 最短で2018年後半に国民投票できてしまう?!
- 複数の項目があったら、項目ごとに投票します。まとめてじゃありません。
- 国民投票の過半数は、投票した人の過半数です。無効票もカウントされません。
- 最低投票率が定められてないので、投票率が低いと改正されやすくなります。
→ 棄権や白票はやめよう。 - よく分からない改憲案は消費者被害のようなものです。
→ よく分からなかったら、ひとまず反対票を入れましょう。 - 自民党が改憲したい項目は、①9条に自衛隊明記、②緊急事態条項、③教育無償化、④参議院選挙の合区解消。首相の衆議院解散権制限も。
- 9条に自衛隊を明記すると、9条で定めた軍隊放棄が骨抜きになり、必要最小限度の枠も外れてしまいます。財源どうするんでしょう?
選挙とは違うの?
憲司くん: | あすわか先生、最近、首相が憲法を変えたいって言ってて、国民投票になるかもしれないっていうんですけど、選挙となんか違うんですか? |
あすわか先生: | 全然違うんだけど、選挙は人とか政権を選ぶけど、国民投票では個別の政策に投票するというのが一番大きな違いですね。 |
憲: | よく選挙の後に、公約違反されることってあるじゃないですか。TPP入らないとか、教育無償化とか。憲法改正だとどうなんですか? |
あ: | 憲法改正だと、国民投票の結果が全てを左右するので、有権者の意思がダイレクトに反映されることになりますね。逆に、与党を支持している人でも、憲法改正の内容が自分の気持ちと違ったら反対してもいいわけ。だって、国民投票は選挙じゃないので、政権は変わらないから。 |
憲: | あー、確かにそうですね。自分の気持ちで投票していいんですね。 |
あ: | デマに流されないようにしないといけないけどね。メリット、デメリットをよく考えて投票したほうがいいですよ。 |
国民投票の流れってどうなってるの?
憲: | 憲法改正って、初めてのことじゃないですか。どんな流れで進むんですか? |
あ: | まず、憲法審査会に提案されます。そこで議論されて、衆参両院の本会議にかけられて、各議院の3分の2以上の賛成で「発議」されます。 発議されたら、そこから60日から180日以内に国民投票ということになります。 なので、最短で発議されてから2ヶ月で投票っていうことになりますね。 |
発議されたら、どれくらい考える時間があるの?
憲: | 衆議院って、解散されたら、1ヶ月後くらいに選挙があるじゃないですか。国民投票だと違うんですね。そうすると、最短60日しか考える時間がないってことですか?60日で、その改正案の問題点をみんなに理解してもらうのって大変じゃないですか? |
あ: | んー。でも、憲法審査会に提案された段階で、どんな改正案が出てるかは分かるし、その前の段階でも憲法審査会とか自民党の内部で検討している案の情報が出てくると思うので、それを見ていけば、どんな問題があるかは分かると思いますよ。だから、前倒しで問題を指摘していって国民の中の反対の声を大きくして行くことはできると思います。そうやって、96条の改憲の要件を緩くする案も潰れたわけだしね。 |
いつ頃、国民投票になるんですか
憲: | なんか、オリンピックまでには憲法改正とか言ってる首相がいるんですが、実際、いつ頃国民投票になりそうなんですか? |
あ: | 2020年に国民投票するためには、2019年にはある程度まとまってないと無理でしょうね。 あと、選挙の日程も見ておくと参考になるんだけど、次の参議院選挙が2019年7月頃、今の衆議院議員の任期が2021年10月までですよね。そうすると、現状、衆参両院とも与党で3分の2を得ているので、2019年までにやるか、1回参議院選挙を挟んで2021年までにやるかというタイミングでしょうね。次の選挙でも必ず3分の2を取れるという保証もないので、できるだけ早くやりたいんじゃないでしょうか。 |
憲: | 最短だといつ頃できるんですか? |
あ: | 最短では、2018年の通常国会で改憲案を憲法審査会に出して、会期末で強行採決で発議して、60日で国民投票にかけてしまえば2018年中の改憲もありうることになりますね。 |
憲: | それまでに改憲案がまとまるんでしょうかね。 |
あ: | あまりまとまってない印象はあるけど、油断は禁物ですね。 |
いくつかの改正項目があったら、一括で投票なの?
憲: | 投票の仕方について聞きたいんですけど、例えば、9条に自衛隊を明記するっていうのと、教育無償化が国民投票にかけられた時って、どうすればいいんですか? 9条改正は反対だけど、教育は無償化して欲しい場合には、まとめて賛成とか反対にするしかないんですか? |
あ: | 関連する事項ごとに投票することになっているので、9条で1回、教育無償化で1回投票することになって、合計2回投票することになります。多分。 |
憲: | 多分…って、どういうことですか? |
あ: | 無理やり関連していると言ってまとめて国民投票にかけることがないとはいえないのでね…。 |
憲: | 怖いっすね。 |
あ: | あとですね、例えば、10個くらい改正項目があった場合には、それぞれの問題点とか、自分の賛否の考えをまとめておいて投票すること自体大変だし、多すぎて考えるのが面倒で国民投票に行かなくなるかもしれないですよね。改正案の問題点を伝える側としても、10個の問題点を国民にしっかり伝えるのって大変になっちゃうと思うんですよ。 |
憲: | 最短の60日だったら、複数の改憲項目の問題を伝えるのってキツイですね。 |
過半数って?
憲: | まあ、でも変な改憲案が出てきても、国民投票で過半数に達しなければいいんですよね。 |
あ: | まあそうなんですが、ちょっと問題を出してもいいですか? |
憲: | な、なんですか? |
あ: | 有権者の過半数が賛成すれば改憲される、○か×か? |
憲: | ・・・○? |
あ: | 答えは×です。有効投票の過半数で改憲されるので、棄権とか白票が多いと少ない賛成でも改憲されてしまいます。例えば、有権者数をざっくり1億人として、投票率が50%だと、5000万人の過半数で2500万0001人賛成すればいいんです。そうすると、人口比で行くと日本人の約20%の賛成で改憲できることになりますね。 |
憲: | それって、少なすぎないですか? |
あ: | でも、最低投票率とか定めてないので、なんなら投票率10%でも改憲できちゃいますよ。 |
憲: | マジッスカ?!ちょっとおかしすぎませんか?! |
よくわからなかったら、どうすればいい?
あ: | さっき言った、改憲項目が多すぎる場合には、棄権も増えて、かえって変えやすくなっちゃうんでしょうね。 |
憲: | そうすると、分かんない時って、どうすればいいんですか? |
あ: | 投票に行って、全部反対に○をつけてくればいいんじゃないでしょうか。分かるように説明しなかった方に問題があったわけですし、立証責任的なものは変えたいと言っている方にあると思いますからね。あと、少なくとも現状維持ですし、別に政権が変わることはないし。棄権すると、改正のハードルを下げるので、半分賛成したようなものなので、賛成じゃないなら、反対に投票しに行かないといけないんですよ。 |
憲: | わかりにくくないですか? |
あ: | でも、契約するときに、内容はよくわからないけど、とにかくここに署名押印してくださいって言われてサインしちゃうと、後でとんでもない請求がきたりして怖いことってあるでしょ。よくわからない国民投票で賛成したり、棄権すると、消費者被害が起きるのと同じことになるんですよ。 |
憲: | 契約書の裏面に細かい字で書いてあることって、読まないことって多いです。 |
あ: | そういうところに重要なことが書いてあったりするんですよね。憲法改正でも、デメリットがないか注意しないといけませんね。 |
どんな項目の改正が検討されているの?
あ: | 今、議論されている主なものは、①9条に自衛隊明記、② 緊急事態条項、③ 教育無償化、④ 参議院選挙の合区解消あたりですね。最近では、首相の衆議院解散権制限も議論されるようになってきていますね。 |
9条に自衛隊明記くらいならいいんじゃないの?
憲: | 自衛隊明記くらいなら、今までと同じなんでいいんじゃないんですか? |
あ: | 今までと同じなら、書く必要はないはずですよね。書き込むと違ってくるのは、集団的自衛権の行使を認めた安保法制のもとでの自衛隊が書き込まれるということなんです。事実上、安保法制を合憲化してしまい、9条で戦争を放棄して、軍隊を持たないことにしたのを変更することになっちゃうんです。 |
憲: | なんか姑息ですね。でも、9条で軍隊を放棄してるのに、自衛隊があるじゃないですか。この状態ってどうなんですかね。 |
あ: | 9条がこうなっているからこそ、従来の政府見解では軍隊とか戦力に至らない必要最小限度の実力しか持たないということになっていたわけです。これが、「自衛のために自衛隊を持っていいよ」と書かれたら、必要最小限度という枠が外れてしまうんです。今は自衛隊の予算は5兆円程度ですが、これが際限なく増えることになり、財源確保のために福祉が削られることになるかもしれません。そういうことまで説明した上で国民投票にかけるべきだと思っています。 |
憲: | …姑息ですね。 |
あ: | 他の項目にもいろんな問題があるけど、またいつか憲法カフェでお話ししましょうね。 |